（注１）

単に「海外神社」とすると、日本国外にある神社が全て含まれてしまうため、大日本帝国の版図内にあったものを特に「植民地神社」と呼ぶ場合もあるが、ここでは「海外神社」で通しておく。

（注２）

こまくにさんのサイトはこちら。片倉さんのサイトはこちら。その他、現地台湾の方のサイトとして、ここやここがある。

（注３）

厳密には、開山神社がその前に鎮座（明治30年）しているが、これは既に存在していた開山王廟（鄭成功を祀った廟）に手を加えて改称したものなので、一旦脇に置いた。

（注４）

参照したものは私が収集した古写真、くにさんからご提供いただいた現存する狛犬の写真、片倉さんの著書（「台湾日治時代遺跡」「台湾土地。日本表情」「台湾　日本統治時代の歴史遺産を歩く」）およびサイト、台湾の『国家文化資料庫』および『台湾大学図書館』のサイトで公開されている古写真である。

（注５）

ここで触れた児玉神社や熊本県護国神社の例は台湾とのつながりがあるのだが、特にそういうものがなくても設置されている例は多数ある。

（注６）

どのようなものを≪日本式狛犬≫とするかを定義するのは、狛犬自体に様々なバリエーションがあるので、難しい。ただ、逆に≪中国式獅子≫が類型化しているので、その判別はほぼ一目瞭然である。
概ね、尻尾が背中から独立した縦尾で、房毛を多く用いたたてがみを持つものを≪日本式狛犬≫とした。

（注７）

狛犬は、神社の創建と同時に設置されるとは限らないので、台湾神社が台湾における神社第一号だとしても、狛犬もそうとは限らない。実際、台湾神社に創建当初から狛犬があったかどうかは確認できていない。しかし、「日本写真帖」（明治45年初版　大正5年10版　警眼社）の写真では狛犬が確認できるので、明治期に既に狛犬があった可能性は高い。

（注８）

日本国内で、セメント製の狛犬に塗装を施してブロンズ製狛犬風に見せている例が見つかっている。それと同様に、この≪ブロンズグループ≫の狛犬も、ブロンズ製狛犬に見せかけようという意図があり、もしかすると元来は塗装されていたのかもしれない。
なお、日本国内での例というのは、ここで紹介されている愛知県稲沢市の神社のものがそうだが、この狛犬は顔は全く似ていないものの、尻尾の作りやたてがみの処理、長い垂耳という部分で台湾で見られる狛犬との共通性が感じられる。

（注９）

汐止神社の吽像の台座側面に何か文字らしきものがあるが、その面が植え込みの方に向けられているため判読できない。これが石工名である可能性はある。
また、嘉義神社の跡に遺されているかつての灯籠（？）には「台北市／株式会社　昭和石材工業謹製」、元の社号標の台座と思われるものに「永登組／石工／稲富松市」の文字が確認できる。この両者が狛犬も製作した可能性はあるだろう。

（注10）

台湾以外でも満洲国の新京神社に存在していたことがわかっている。これも日本から運ばれたものであろう。

（注11）

手許に『岡崎石製品型録』という冊子がある。これは昭和戦前に発行された岡崎の石工による商品カタログなのだが、ここに、岡崎で造った狛犬を発送した場合に送料がどれくらいかかるのか示した表がある。この中に朝鮮半島の都市名が含まれている。残念なことに、台湾の都市名はないが、遺存例からは台湾にも発送していたと考えられる。
ちなみに、愛知県岡崎市から東京汐留までの石製品の鉄道での運賃は貸切扱いで１kgあたり６円27銭、小口扱いで100kgあたり1円31銭。これに対して朝鮮京城までの場合、それぞれが22円14銭、４円56銭になる。同じ型録に３尺サイズの狛犬が１対で640kgとあるから、小口扱いでも東京汐留が約８円38銭に対し、朝鮮京城が約29円18銭である。この差は大きいであろう。

（注12）

竹山神社グループや高雄神社グループは、以下の写真ように本当によく浪花系狛犬の特徴を引き継いでいる。

京都市の八坂神社の狛犬（左）と林内神社のもの（中）は耳や口の周りがよく似ており、高雄神社のもの（右）は三角になった巻舌が似ている。 なお、八坂神社の狛犬は明治39年（1906）の奉納。
岐阜市の伊奈波神社（左）、布袋塩場（中）、竹山神社（右）の尾は、いずれも下から≪Ｙ＋Ｖ＋山≫と重なった形をしている。 伊奈波神社の狛犬は文久3年（1863）の奉納。 前から見ると下のような姿。

（注13）

台湾神社（旧社殿）の設計者は伊東忠太である。伊東忠太は靖国神社などの狛犬を自分でデザインしている。それらは典型的な日本の狛犬とはかけ離れたものである。その意味では台湾神社の狛犬も、伊東忠太がデザインしたために日本国内に類例のないものになってしまったと考えられなくもない。しかし、伊東忠太のものと判明している他のものとあまり似ていない。

（注14）

中国本土では、上海神社や天津神社に北方系の中国式獅子が設置されており、ここで提示した枠組みが使用可能に思える。
ただ、満洲国や朝鮮半島については資料が少なく、今のところはなんとも言えない。

（注15）

ここで提示した枠組みの外に、台湾の寺廟に日本式狛犬が設置された例があることを、くにさんからご教示いただいた。つまり、神社に現地の狛犬類似のものが取り込まれる場合とは逆に、現地の宗教施設が日本の狛犬を受け入れるという可能性もあるわけである。
なお、その実例は新店市の太平宮（☆　☆）である。これは明らかに岡崎古代型狛犬だが、神社跡から移設されたのではなく、初めからここに設置されたものだという。